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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT 初代プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第124回
Heavy Weather
Weather Report



ヘヴィ・ウェザー
ウェザー・リポート
撰者:松井三思呂



Heavy Weather
Weather Report

ザヴィヌルのポップ感覚と、ショーターのジャズ・スピリットに溢れたアヴァンギャルド感覚との綱引きという構図から、バンドは宇宙人ジャコの持つ独特のタイム、リズム感覚を加えた三位一体の構図に変化を遂げた。「ハヴォナ」に、それがよく現れている。テーマ提示後のピアノとベースのユニゾン、ここで既にジャコが超絶技巧を繰り出す。続くザヴィヌルのソロもいつになくジャズ的で、ショーターは文句なし。そして、真打登場とばかりにジャコのソロが展開される。



さんふらわあ ジャズナイト
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
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ジャズ カフェ&バー Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Jazz & Booze さりげなく
ジャズを呼吸する街で夜を堪能。
神戸を代表するジャズバー、さりげなく

ジャズ喫茶 jam jam
ゆったりした地下空間でジャズを満喫。
神戸元町のジャズ喫茶、jam jam

レコードバー ブラック
極上のサウンドをアナログレコードで。
神戸元町のレコードバー、BRAQUE。

ジャズバー Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

バーインク
ALTECが生み出す極上のサウンド。
新神戸駅近くの隠れ家バー。


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二月の声を聞いて、ムチャクチャ寒い日が続きますね! この歳になると、暑さはまだしも寒さはダメです。着膨れて、震えながら通勤している松井です。



前回のコラムがアップされた後、『ブラック・マーケット』について、放浪派メンバー吉田さんから「このレコードほど当時聴かれたのに、今忘れられているレコードはありませんね!」というコメントを頂いた。まさに正鵠を得た言葉で、今回紹介する『ヘヴィー・ウェザー』などのアルバムにも、ピッタリあてはまる。もっと言うならば、ウェザー・リポートだけではなく、今ではフュージョン全般が聴かれなくなっている状況がある。

フュージョンと呼ばれる音楽の原点の一つが、70年にリリースされたマイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』にあることは間違いなく、ショーターやザヴィヌルをはじめとして、このレコーディングに参加したチック・コリアやジョン・マクラフリンが、この後のフュージョン・シーンを牽引していく。
そして、70年代の後半にフュージョン・シーンはピークを迎えるが、その後の玉石混交、粗製乱造の結果、80年代に入ると急激にその輝きを失い、衰退の一途を辿る。
このフュージョンの栄枯盛衰は、そのままウェザー・リポートの歴史でもあると言ってよいだろう。

また、日本のジャズ・シーンを振り返っても、70年代の中頃から、渡辺貞夫は『マイ・ディア・ライフ』をスタートにフュージョン路線を突っ走っていき、同様に日野皓正、本田竹曠と峰厚介(ネイティブ・サン)、今田勝、増尾好秋、土岐英史など、硬派な「ダンモ」のミュージシャンもフュージョンに傾倒していく。
彼らの活動に加えて、モダンジャズをルーツとしないカシオペア、スクェア、プリズム、ナニワエクスプレス、松岡直也などもシーンに参戦。70年代後半から80年代の中頃まで、日本のジャズ・シーンはフュージョンの百花繚乱、我が世の春とばかりに「猫も杓子も」状態を呈する。

では、冒頭に紹介した吉田さんの言葉ではないが、現在のジャズファンでナベサダ聴くなら、『カリフォルニア・シャワー』や『モーニング・アイランド』が最高傑作で、これらにとどめを刺すと言う人間がいるだろうか? また、彼女と車でデートする時(最近は車が必要条件ではないようだが・・・)、音はカシオペアの「朝焼け」がベストという人間がいるだろうか?

フュージョンが今や忘れ去られた音楽になってしまった原因は、ミュージシャン側の責任よりもレコード会社側の責任が重い。アルバムの売上という面から、それまでのジャズのリスナー層とは違ったマーケットが形成された結果、中身が薄い作品も一定のセールスを上げることができた。
だが今となっては情けないことに、これらのアルバム達は中古レコード店で300円バーゲンのエサ箱に入れられても、ほとんど見向きもされない。

前篇のコラムでも書いたように、そんなシーンのなかで、ウェザー・リポートは圧倒的な存在のモンスターバンドであった。彼らでさえ、忘れられかけられていることは悲しむべきで、もう一度光があたっても良いように思う。



Heavy Weather
Weather Report
【Amazon のディスク情報】

『HEAVY WEATHER』(Columbia PC 34418)
ウェイン・ショーター(ss、ts)
ジョー・ザヴィヌル(e-piano、synthe)
ジャコ・パストリアス(e-bass)
アレックス・アクーニャ(ds)
マノロ・バドレーナ(perc)
1976年10月 ノース・ハリウッド録音


前作の『ブラック・マーケット』に続く通算7枚目のオリジナルアルバム。ジャコ・パストリアスの全面参加を得て、「バードランド」という大ヒット曲も生まれたことから、バンドに50万枚を超えるセールスという莫大な商業的成功をもたらした。

1曲目の「バードランド」、言わずと知れたウェザーの代表曲。マンハッタン・トランスファーのカヴァーでも知られる名曲で、私も未だにイントロ部でジャコが奏でるハーモニクスには心躍る反面、非常に罪作りな曲だとも思っている。
何が罪作りだと言えば、この曲が生まれ、『ヘヴィー・ウェザー』が大ヒットした結果、当時のフュージョン・シーンにいたほとんど全てのミュージシャンが「バードランド」〜『ヘヴィー・ウェザー』を目標にせざるを得なくなった。もちろん、このことだけではないと思うが、皮肉なことにフュージョンが画一的な音楽となっていった原因の一つではないだろうか。

ウェザー・リポートの与えた影響はフュージョン・シーンだけではなく、音楽業界全体に及んでいる。例えば、後期のリトル・フィートはウェザーをアイドルとしていたし、ジョニ・ミッチェルの『ミンガス』、『シャドウズ・アンド・ライト』は当時恋人であったジャコを起用して、ウェザー的音空間を現出させている。

幅広くミュージック・シーン全体に影響を与えることになった『ヘヴィー・ウェザー』だが、「バードランド」以外の収録曲にも、一つとして捨て曲はない。
バンドの中心にいたザヴィヌルとショーターに加え、ジャコがアルバム制作に深く関わったことから、ザヴィヌルのポップ感覚と、ショーターのジャズ・スピリットに溢れたアヴァンギャルド感覚との綱引きという構図から、バンドは宇宙人ジャコの持つ独特のタイム、リズム感覚を加えた三位一体の構図に変化を遂げた。

今回じっくりアルバムを聴き直してみたが、ジャコ作曲の「ハヴォナ」に、この三位一体の構図が最も現れているように感じた。
一つの見方として、アルバムの収録曲中、最もストレート・アヘッドなジャズであると感じられる曲で、テーマ提示後のピアノとベースのユニゾン、ここで既にジャコが超絶技巧を繰り出す。それに続くザヴィヌルのソロもいつになくジャズ的で、ショーターは文句なし。そして、真打登場とばかりにジャコのソロが展開される。
この演奏に対して、へヴィメタルのカリスマバンドであるメタリカのベーシスト、ロバート・トゥルージロは次のようなコメントを残している。「『ヘヴィー・ウェザー』に入っている「ハヴォナ」は最高だ。ベーシストにとって、この曲で最も心惹かれるのは、ベース・ソロの箇所だろう。見事なリリシズム、ストラヴィンスキーからの引用、間の効果的な用い方、絶妙のバランス感覚などからして、そのプレイは僕の聴いた中で最も美しいベース・ソロであり、作品の中にあるもう一つの完璧な作品だ。」
ジャコが他のベーシストに与えた影響は計り知れないものがあり、彼だけではなく、スティングやレッチリのフリーといったロック界のビッグネーム達も、ベーシストとしてジャコから大きな影響を受けたことを素直に認めている。

また、「ハヴァナ」の後半部においては、個人のソロパートではなく、微妙にテーマに絡みながらも、全員の集団即興を垣間見せる部分もあって、メンバーのテンションが異常に高く、そこから生み出されるグルーヴは半端ない疾走感をもたらせる。
まさに、バンド結成時に目指した「We always solo and never solo」を具現化した瞬間だろう。



8:30
Weather Report
【Amazon のディスク情報】

『8:30』(Columbia PC2 36030)
ウェイン・ショーター(ss、ts)
ジョー・ザヴィヌル(e-piano、synthe)
ジャコ・パストリアス(e-bass)
ピーター・アースキン(ds)
1978年8月〜11月 ライヴ録音他


ドラマーに「千手観音」ピーター・アースキンが加わり、バンド史上最強のメンバーによるライヴ盤(正確に言えば、アナログ2枚組のD面はスタジオ録音)。ライヴ9曲はこの時点でのベスト盤的選曲で、ウェザー未体験者には「最初の1枚」としてもおススメ。

また、『ブラック・マーケット』以降、ザヴィヌルがシンセサイザーを使う比率が高まり、スタジオワークが高度化していくとともに、プログレッシヴ・ロックではないが、スタジオの音がライヴでは表現できないのではないかという心配が生まれていた。
しかしながら、バンド絶頂期のライヴ盤、この『8:30』を聴けば、そんな心配も杞憂に終わる。

例えば、1曲目「ブラック・マーケット」はアルバム・ヴァージョンよりかなりアップテンポで演奏され、メンバー一体となった躍動感と、曲の後半に繰り広げられるショーターとアースキンの壮絶バトルなどのアドリブ感覚。素晴らしい演奏だ。

話が少し横道にそれるが、第14回コラムで紹介したミシェル・ペトルチアーニのヴィレッジ・ヴァンガードの翌日と翌々日(1984年3月14、15日)、私はニューヨークのブルーノートで、ジャコのバンドのライヴを体験している。
ハイラム・ブロック以外のメンバーは覚えていないが、ジャコのプレイにノックアウトされ、予定を変更して、2日連続でブルーノートに通った記憶がある。
この時期、ジャコはウェザーを退団して2年、アルコールとドラッグへの過度の依存、精神障害による奇行が問題となっていたが、ステージ上ではそんな事は全く感じさせず、気の合う仲間とプレイできる喜びに溢れていたように思った。2日目の最終セットのアンコールでは、たまたま客席に来ていた父親をステージに呼び寄せ、肩を組んで歌ったくらいだ。

ウェザー・リポートは15年間に及ぶ活動期間中、ザヴィヌルとショーター以外のメンバーは数多く入れ替わったが、レギュラーメンバーにギタリストを加えることは一度も無かった。
これはショーターの意向だったのではないかと思う。多くのチープなフュージョン・グループがロック・ギター紛いのロング・ソロを中心に曲作りを行うなか、ウェザーは全くそれをしなかった。

電化マイルスに感動できない私にとっては、ウェザー・リポートはフュージョンではなく、エレクトリック・ジャズの極北に位置する。繰り返しになるが、彼らが創造した音楽は今後も語り続けられなければならない。



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