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大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第118回
Live at the Jamboree
Andrea Motis



ライブ・アット・ザ・ジャンボリー
アンドレア・モティス
撰者:平田憲彦



Live at the Jamboree
Andrea Motis
【Amazon のCD情報】

18歳にして3枚目のレコーディング。といっても単独名義ではなく、3枚とも音楽の師であるチャモロ先生と組んでいるバンドでの録音。この3枚目はライブ録音だが、まるでスタジオで録ったかのようなクリアでパワフルなサウンドを楽しめる。CDとDVDがセットになっているお得盤。収録曲は同じ。アルバムに挿入されているブックレットがなかなか良くできていて、アンドレアの好きなドローイングが3点収録。ひとつは彼女のおじいさんが描いた鳥の絵。もうひとつは、ジョアン(友人?あるいはチャモロ先生のことか?)が描いた抽象画。そしてもう一点が、妹が描いたファンキーなイラスト。ミロ、ダリ、ピカソ、そしてガウディを生み出したスペインという国に思いを馳せるきっかけにもなる粋な演出である。チャモロ先生とイグナシ・テラザ、そしてアンドレアのライナーノーツがなかなか読み応えあり。スペイン語と英語のバイリンガル表記なので、それも有り難い。

1. Exactly Like You
2. Meditacao
3. I Fall In Love Too Easily
4. Sun Showers
5. Someday My Prince Will Come
6. Moodi's Mood For Love
7. Chega De Saudhade
8. Summer Time
9. Lullaby Of Birdland
10. Corcovado
11. All Too Soon
12. My Baby Just Cares For Me

Andrea Motis(vo,tp,as)
Joan Chamorro(b)
Scott Hamilton(ts)
Josep Traver(g)
Ignasi Terraza(p,org)
Esteve Pi(ds)

Recorded: 13th, 14th April 2013
Barcelona, Spain
Label: Swit Records



Andrea Motis & Joan Chamorro Interview
アンドレア・モティス・インタビュー
2015年の来日公演より

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神戸元町のジャズ喫茶、jam jam

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ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

バーインク
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2014年の秋も深まったある日、音楽仲間からこんなメールが入ってきた。

『スペインのAndrea Motisっていうジャズシンガーで、トランペットもサックスもやるっていう可愛いこちゃんには感服したよ』

可愛いこちゃんのジャズプレイヤーなら山ほどいる。それだけなら大して気にも留めないところだが、その友人というのは僕のブルース仲間で、彼はなかなかの耳をしている。その彼が『感服した』というのである。しかも、シンガーでトランペットもサックスも吹くスペインのジャズミュージシャン、まったく想像も出来ないその組み合わせ。

今はYouTubeという便利な媒体があるので、さっそくチェックしてみた。
Andrea Motisは、どうみても10代の少女であった。そして、共演しているコンボは誰が見てもオッサン連中である。その奇妙な組み合わせのステージで、Andrea Motisは堂々と『Someday My Prince Will Come』を歌っていた。

たとえて言うなら、ブロッサム・ディアリーの声とノラ・ジョーンズの気怠さをミックスしたような、リッキー・リー・ジョーンズにも似たヴォーカル。感情表現は抑え気味で、どちらかと言えばぶっきらぼうな歌唱ともいえるが、しかし、それがかえって情緒を醸し出している。
子供の歌と大人の歌の狭間、とでも言おうか。

以前のコラムで片岡学さんのインタビューを掲載したが、その片岡さんはこんな事を仰っていた。
『歌はね、歌うんじゃないんだよね、語るんだよ』

Andrea Motisの歌を聴いてまず初めに感じたのは、まさにこのことだった。Andrea Motisは『歌っているというよりは、語っている』のである。

歌のあとトランペットの演奏が始まったが、これは紛れもなくマイルスの影響が濃い。しかし、女性プレイヤーだからかどうかわからないが、音がとてもソフトである。そして、ベンドがすごく自然で、それが心地よいグルーヴを生み出している。

決して技巧的ではないし、ハッとするようなアドリブもなければ、胸躍るパッションも無い。しかし、音楽のみならず、すべての表現、芸術の本質は、技巧とは無縁である。上手い下手を越えた、オリジナリティこそが大切なのだ。技巧とは過去の模倣であり、オリジナリティとは未来への探求に他ならない。
トランペットはまだ表現の途上にあるのだろうが、このサウンドの緩さはボーカルとマッチしている。
Andrea Motisのボーカルは、ここにしかないというオリジナリティに満ちている。僕は惹きつけられてしまった。



Andrea Motisの情報は、2014年12月現在の日本では極めて限られている。むしろ、ほとんど無いといっていい。ウィキペディアを引いてみても、日本語のページはおろか、英語のページすら存在しない。辛うじて、本国のスペイン語版とフランス語版のページがあるくらいだ。
本人のウェブサイトも見つかったが、これは公式サイトと呼べるようなものではなく、ブログみたいな簡素なものだった。当然スペイン語で記載されている。

僕はスペイン語を全く理解出来ないので、ウェブ上で一旦英語に翻訳して、その詳細を初めて知ることが出来た。
ちなみに、スペイン語から日本語へのウェブ翻訳は意味不明な訳になってしまうので、英語に訳すと読みやすい文章になる。

Andrea Motisをどう表記するかだが、日本では前述の通り知名度はほぼゼロなので、ジャーナリズムによる表記は未確認。スペインで放送されたテレビ番組を見る限り、発音はアンドレア・モティスが近いようだ。

※付記:2015年5月来日時、ご本人に確認したところ『モティス』というカタカナ表記が最も近いと判明。従来このページでは『モーティス』と表記していたが、訂正しました。



アンドレアは、1995年にバルセロナで生まれた。
家族は音楽一家のようで、父親はトランペット奏者、妹はギターとウクレレのプレイヤーでもある。7歳の頃、住んでいたバルセロナのセント・アンドリューにある音楽学校でトランペットを始めたという。11歳の頃にバンドに参加。それが後のセント・アンドリュー・ジャズ・バンド(Sant Andreu Jazz Band)である。学校では、音楽教師でミュージシャンでもあるジョアン・チャモロ(Joan Chamorro)に師事。
13歳の時、チャモロ先生がバンドにシンガーを必要としていた事をきっかけに、アンドレアは歌うことになった。そして、カタルーニャで開催されている多くのライブに参加しながら、腕を上げていく。
2010年(15歳)にシンガーとしてレコーディング。それはアルバム『Joan Chamorro presents Andrea Motis』となって発売された。日本でも購入出来る。

今聴くことが出来る最も新しいアンドレアのユニットは、『Andrea Motis & Joan Chamorro Group』であり、僕がYouTubeで見たライブ映像は、そのバンドだったようだ。
現在は、スペインのバルセロナを始め各地でライブを行っているが、いよいよスペイン以外の国でも演奏する機会が訪れようとしている。

以上が、現在わかる範囲で調べたアンドレア・モティスの経歴である。



チャモロ先生とは数年来活動を共にしてきていて、スペインではテレビ出演なども増えてきているようだ。この露出具合を見る限り、もうスペイン(あるいはカタルーニャ)ではブレイクしていると考えて良いのかもしれない。
YouTubeでも多くの映像を見ることが出来るが、僕が購入したアルバムは2013年にライブレコーディングされたアンドレアの最新作『 Live at the Jamboree』である。
名義は、 Andrea Motis & Joan Chamorro Quintet、となってる。

このライブは、チャモロ先生をウッドベースに、ピアノとドラムとギターのカルテット編成というレギュラークインテット。そこに、スコット・ハミルトンがゲストで加わっている。
バルセロナにあるジャンボリーというライブハウスでの収録。CDとDVDがセットになっている。収録曲は同じだが、もちろん映像で楽しむ方が圧倒的にインパクトがある。
というのは、アンドレアは18歳の小娘ながら堂々とした歌いっぷり、控えめながら安定したサウンドのトランペット演奏、それを取り囲む面々がいずれもオッサンおじさんばかりで、そのアンバランスさがとてもおもしろいからだ。

パーソネルは以下の通り。

Andrea Motis(vo,tp,as)
Joan Chamorro(b)
Scott Hamilton(ts)
Josep Traver(g)
Ignasi Terraza(p,org)
Esteve Pi(ds)

いずれもベテランミュージシャンらしいが、イグナシ・テレザ(Ignasi Terraza)は日本でも人気のスペイン人ジャズ・ピアニストのようだ。僕はまったく知らなかったが。
このアルバムを聴くと、人気ピアニストなのもうなずける。抜群に上手い。テクニックが目立つわけではなく、スウィング感とアドリブのメロディラインが極めて美しい。何時間でも通しで聞いていられそうな安心感。
今回収録されている『Lullaby Of Birdland』では、イントロはピアノソロからはじまり、バッハのようなバロック調でぐいぐい押していき、いきなり4ビートに替えて歌が始まる、というスリリングな演奏も聴かせてくれる。

そして、ゲストとして参加しているスコット・ハミルトンは、もはや知らない人が少ないだろう米国人サックスプレイヤー。良く歌い、良く泣き、心地よいブロウを堪能できる。
ギターもドラムも、知らないミュージシャンだが、相当の強者だと思う。この二人のスウィング感は尋常じゃない。

気持ちいいジャズ、というものを具現化してくれているバックのベテラン5人衆。そこに乗っかってのびのび歌うアンドレア、という構図は、いわゆる『音楽の幸せな構図』のひとつと言える。

スタンダードナンバーで固められたセットリストは以下の通り。

1. Exactly Like You
2. Meditacao
3. I Fall In Love Too Easily
4. Sun Showers
5. Someday My Prince Will Come
6. Moodi's Mood For Love
7. Chega De Saudhade
8. Summer Time
9. Lullaby Of Birdland
10. Corcovado
11. All Too Soon
12. My Baby Just Cares For Me

CDだけ聴いていると分からないことが映像では理解出来るが、このベテラン5人衆のオッサン、全員がアンドレアに恋をしている。それは、恋愛の恋というよりは、音楽のミューズともいうべき存在としてのアンドレアへの恋である。それが、1時間ほどの映像に、克明に記録されている。その光景を見る僕たちも、きっと幸せな気分をもらえるだろう。

ウィントン・マルサリスが登場したのも10代だったと思うが、ウィントンのような爆発的なほとばしる才能をアンドレアのトランペットから感じ取ることは難しい。ビリー・ホリディが好きだというそのボーカルスタイルも、味わい深いが、まだ説得力に欠ける若さがある。しかし、それらすべてが、なぜか豊かなサウンドに調和していることに驚かされる。語弊があるかもしれないが、強いて言うと『頑張らないジャズ』という感じ。
この先どう成長していくのか、とても楽しみであるし、是非日本でライブを見てみたい。



18歳のアンドレアはもちろん美しいが、それを支え、バックアップしつつ、素晴らしい演奏を聴かせてくれるオッサン5人衆も、とても美しいし、カッコイイ。
こんなオッサンになりたいものだ。



2015年の来日時に行ったインタビュー、ぜひお読みください。

Andrea Motis & Joan Chamorro Interview
アンドレア・モティス・インタビュー
2015年の来日公演より


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