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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT 初代プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第114回
To My Queen
Walt Dickerson



トゥ・マイ・クイーン
ウォルト・ディッカーソン
撰者:平田憲彦






さんふらわあ ジャズナイト
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
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ジャズ カフェ&バー Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Jazz & Booze さりげなく
ジャズを呼吸する街で夜を堪能。
神戸を代表するジャズバー、さりげなく

ジャズ喫茶 jam jam
ゆったりした地下空間でジャズを満喫。
神戸元町のジャズ喫茶、jam jam

レコードバー ブラック
極上のサウンドをアナログレコードで。
神戸元町のレコードバー、BRAQUE。

ジャズバー Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

バーインク
ALTECが生み出す極上のサウンド。
新神戸駅近くの隠れ家バー。


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ウォルト・ディッカーソン(Walt Dickerson)は、1928年に米国フィラデルフィアで生まれたヴィブラフォン奏者である。1961年と1962年にプレスティッジからリーダーアルバムを4枚リリース。いずれもカルテット編成である。1962年にはダウンビート誌がベスト・ニュー・アーティストと選出している。1965年から10年間ジャズシーンから離れていたが、1975年以降デンマークのステープルチェイスから何枚もの優れたアルバムをリリース。その中には、リチャード・デイヴィスやサン・ラとのデュオアルバム、無伴奏ソロアルバムも含まれる。2008年に他界した時には、日本でもいくつかのサイトで追悼記事が書かれた。

以上が、ウィキペディアをはじめとするウェブページを調べて知った、ウォルト・ディッカーソンの概要だ。



ヴィブラフォンがエレクトリック楽器だったことを最近まで知らなかった僕が、ヴィブラフォン奏者のアルバムを取り上げることはいささか無謀だと言えなくもないが、それでもウォルト・ディッカーソンのサウンドに惚れ込んでしまった僕としては、それほど有名でもないディッカーソンのことを、多くの人に聴いてもらいたい一念で今回のコラムを書くことにしたというわけである。

そもそもの始まりは、リチャード・デイヴィスだった。
あのゴリゴリでヘヴィなベースを一度じっくり聴いてみたいと考えてYouTubeで検索してみた。すると、有名な『ヘヴィ・サウンド』も引っかかったが、ディッカーソンとのデュオ作品も出てきた。
元々ヴィブラフォンは好きだったこともあって、さっそく聴いてみた。

もちろん、ミルト・ジャクソン、ボビー・ハッチャーソンは大好きである。しかしこのウォルト・ディッカーソン、まったく異なるテイストで、僕がかなり好きな、ずっと聴きたいと思っていたサウンドだった。

僕は、ブルージーでソウルフルなサウンドが好きだが、いわゆるモードジャズや新主流派の、あの浮遊感覚あふれるトリップサウンド、クラシック音楽にも通底する思索的な理屈っぽいサウンドも、大好きなのである。

ディッカーソンのヴィブラフォンは、僕にとってドンズバだった。
リチャード・デイヴィスとのデュオは、まるで水墨画のように、静寂な空間が組織されたかのような、美しいサウンドだった。

こうなったら聴くしかない。片っ端から聴きあさり、何枚ものアルバムを入手、という事態となった。



プレスティッジで吹き込んだ4枚は、ヴィブラフォン+ピアノトリオという、いずれもカルテット編成である。ドラマーはすべてアンドリュー・シリル。それ以外のメンバーは入れ替わっているが、サウンドの根幹は変わらない。
いわゆるモードジャズ的なテイストで、現代音楽にも通じる和音や旋律、浮遊感覚が濃厚だ。
始めの3枚も素晴らしい作品だと思うが、4枚目の『To My Queen』が最も人気アルバムらしい。ピアノがアンドリュー・ヒル。ベースがジョージ・タッカー。奥深い音空間に疾走するヴィブラフォンがめくるめく彩りで、見事なサウンドの調和。気持ちいいアルバムである。

4枚目が最も人気というのもうなづける。やはりアンドリュー・ヒルのピアノが抜群。ディッカーソンのサウンドと溶け合って、美しい空間を生み出していて、恍惚となる。
ディッカーソンとヒルの相性は抜群で、同じ方向性の音楽的世界観を二つの楽器で同時に鳴らしているかのような一体感。アンドリュー・ヒルが好きな人にも大推薦できるし、メロディを超越したサウンドとアンビエンスを体験出来るので、現代音楽ファンがジャズに入るきっかけになる一枚ともいえるのではないだろうか。


To My Queen
Walt Dickerson
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ステープルチェイスでの作品でも美しいヴィブラフォンを堪能できる。僕には、このステープルチェイス盤がなにより愛聴盤となった。
リチャード・デイヴィスとのデュオは言葉に尽くせぬほどに美しく、官能的にして静謐、透き通る音空間に酔いしれる。大河にたゆたう水のように、豊饒にして寡黙、大胆にして繊細。聞くほどに幸せを実感できる名盤。


Divine Gemini
Walt Dickerson & Richard Davis
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また、サン・ラとのデュオ。もはや芸術作品だと断言できるほどの高い精神性をたたえている。ここには、メロディらしい音も、スウィング感というリズムもないが、音の芸術としか呼び様のない独自性がある。前衛的でアヴァンギャルドと言えなくもないが、無垢な魂とでも呼べる純粋表現を感じてしまう。
そういう意味では、ジャズというより現代音楽といってもいいかもしれない。しかし、この自由闊達さは明らかにジャズの空気だ。


Visions
Walt Dickerson & Sun Ra
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ジャズのテイストが強い音を聴きたい場合は、プレスティッジ盤がおすすめ。ジャズにこだわらず、現代音楽にも通じる自由と、ミニマルで静謐な音を聴きたい場合は、ステープルチェイス盤をおすすめしたい。

いずれにおいても、美しいとしか言えないヴィブラフォンを聴くことが出来る。


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