万象堂
著者インタビュー
編集後記
WeBOOK
書物迷宮
ご購入
万象堂ご紹介
お便り


jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT 初代プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第107回
Three Riverside Albums
Art Blakey and the Jazz Messengers



リヴァーサイド3部作
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
撰者:松井三思呂



リヴァーサイド3部作
UGETSU
CARAVAN
KYOTO

Art Blakey and the Jazz Messengers

3部作とは、『ウゲツ』(RLP 464)、『キャラバン』(RLP 438)、『キョウト』(RLP 493)。リヴァーサイド3部作と聞いて、たちまちこの3枚のアルバムがすらすらと出てくる人は、JM中毒が相当に進行している。『ウゲツ』はショーターがこの使命を全うし、バンドが完全に一体となって、JMの新しい「音」を創りきったアルバムで、3管メッセンジャーズの代表作。『キャラバン』は、ベースがジミー・メリットからレジー・ワークマンに代わった最初のアルバム。『キョウト』はリヴァーサイド最終作で、この史上最強の6人による最後のアルバム。ブルーノートも文句なしだが、リヴァーサイドの3管メッセンジャーズ、是非聴いてみてほしい。



さんふらわあ ジャズナイト
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
さんふらわあ JAZZ NIGHT 公式サイトへ

ジャズ カフェ&バー Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Jazz & Booze さりげなく
ジャズを呼吸する街で夜を堪能。
神戸を代表するジャズバー、さりげなく

ジャズ喫茶 jam jam
ゆったりした地下空間でジャズを満喫。
神戸元町のジャズ喫茶、jam jam

レコードバー ブラック
極上のサウンドをアナログレコードで。
神戸元町のレコードバー、BRAQUE。

ジャズバー Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

バーインク
ALTECが生み出す極上のサウンド。
新神戸駅近くの隠れ家バー。


広告掲載のお問い合わせはこちらへ

▲目次へ

3月の声を聞いても、まだまだ寒い日々が続きますね。この歳になると、年々寒さがこたえるようになり、本格的な春が待ち遠しいところです。

今回は本編に入る前に、少し『あまちゃん』のことを。
「何をいまさら『じぇじぇじぇ!』なの?」と言われそうですが、何も能年玲奈や、キョンキョン、薬師丸ひろ子ではなくて、音楽を担当した大友良英です。

元々、スポーツ番組以外はあまりテレビを観る習慣がない私のこと、「ムチャクチャ面白い!」という声は耳にしていましたが、リアルタイムで『あまちゃん』を観ることはありませんでした。
ただ、どこかで『オープニングテーマ』や、「これぞ、アイドル歌謡!」の『潮騒のメモリー』は耳に残っていました。

そんななかで、正月休みにNHKでやっていた『即興が世界をつなぐ 〜大友良英と“音遊びの会”の仲間たち』という番組を観て、ビックリ!!!

読者の皆さんのなかには、ご存知の方も多いと思いますが、大友良英は明治大学ジャズ研在籍中からギターを高柳昌行に師事し、フリージャズをルーツとするアヴァンギャルドな音楽を追求する一方で、映画やテレビドラマの音楽を担当するなど、非常に幅広い音楽活動を行ってきた人。

そんな彼の活動のひとつに『音遊びの会』があります。『音遊びの会』とは、知的障害者と家族、ミュージシャンや舞踏家などのアーティスト、音楽療法士が集まり、即興演奏による“新しい音楽”を生み出す活動を行っているグループ。9年ほど前に、神戸大学の大学院生が中心になって立ち上げた非常にユニークな集団です。

大友良英は結成直後からのメンバーで、NHKの番組は『音遊びの会』のUKツアーを密着取材。ロンドンやグラスゴーで絶賛を浴びる様子を映し出していました。
フリージャズ畑のアーティストは、前回のコラムの主役を務めた山下洋輔や坂田明など、多芸な人が多いように感じますが、大友良英もその一人で、これからも注目していきたい人です。



さて、本編に入り、今回のテーマはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(以下「JM」という。)のリヴァーサイド3部作! 3部作とは、『キャラバン』(RLP 438)、『ウゲツ』(RLP 464)、『キョウト』(RLP 493)。リヴァーサイド3部作と聞いて、たちまちこの3枚のアルバムがすらすらと出てくる人は、JM中毒が相当に進行している。

というのも、有名なマイルスのプレスティッジ4部作などとは違って、この「3部作」は一般に使われているものではなく、今回のテーマを考えた時に、たまたま私が思いついた代物だから。

では、なぜJMなのか?
私が前回のコラムを書き上げた後のある日、コテコテ・ジャズの牙城、あるいはハードバップの迷宮とも言うべき元町のジャズバーDoodlin'で一杯やりながら、マスターのチャチャイさんとブルーノートのキング盤と東芝盤の違いなんかで、話が盛り上がっていた時、

マスター「放浪派コラムも100回超えましたけど、誰もメッセンジャーズを書いてないですよね。」
私「そう言えば、不思議と誰も書いてないなぁ・・・。」
マスター「松井さん、書いてみてくださいよ。」
私「前回は山下洋輔でかなり重たい内容やったし、肩の力抜いて、メッセンジャーズいっちゃいますか!」

安請け合いしたものの、はたと困った。
何と言っても、JMはモダンジャズ史上に残る名門コンボ。40年近い活動期間のなかで、『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ Vol.1/2』(Blue Note 1507/1508)を手始めに、名盤は数知れず。

私のレコード棚にも20枚を超えるアルバムが並んでいるなか、何を選ぶか思い迷っていたところ、フェイスブックのフィードにチャチャイさんが、「今日の一発目」で『ウゲツ』をアップ!
「これ、これ、これですや〜ん!!!」と飛びついた。




UGETSU
Art Blakey and the Jazz Messengers
【Amazon のディスク情報】

『UGETSU』(Riverside RLP 464)
フレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)
ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)
レジー・ワークマン(b)、アート・ブレイキー(ds)
1963年6月16日 ニューヨーク「バードランド」でのライヴ録音

バンドメンバーの入れ替わりはあるものの、メッセンジャーズの歴史は前期の2管編成時代と、後期の3管編成時代に分けられる。
もちろん、2管メッセンジャーズも大好きだが、多くの批評家やJMファンが語っているように、私もこのリヴァーサイド3部作のメンバーがJM史上最強の布陣であったと思う。

また、この時期はウェイン・ショーターが音楽監督としてバンドを掌握しており、そのあたりのことはシダー・ウォルトンに焦点を当てた第94回のコラムでも触れている。今回のコラムはその続編として読んでいただきたい。

3管メッセンジャーズはいろいろなレーベルに録音を残しているが、このJM史上最強の6人によるアルバムは、リヴァーサイド3部作と『フリー・フォー・オール』(Blue Note 4170)だけだ。

加えて、JMは「ハードバップが誕生した夜」と言われる『バードランドの夜 Vol.1/2』(Blue Note 1521/1522)(正確には「アート・ブレイキー・クインテット」というクレジット)以降、バードランドでのライヴ録音を数多く行っている。
言わば「バードランド」はホームグラウンドであって、『ウゲツ』はそのホームでのライヴ。リラックスしたなかでの真剣味が何とも言えない。



ところで、一般的には3管メッセンジャーズと言えば、ブルーノートの『モザイク』(Blue Note 4090)、『ブハイナズ・ディライト』(Blue Note 4104)、『フリー・フォー・オール』(Blue Note 4170)が傑作と評されている。

もちろん、私もこれらのアルバムは大好きだし、傑作という評価にも異論はない。ただ、ブルーノート、ひいてはアルフレッド・ライオンのポリシーと言えばそれまでだが、どうしても「作り込んでいる」印象がある。
そして、94回のコラムでも書いたように、音楽監督ショーターがアルフレッド・ライオンの顔色を窺っているようにも思える。

これに対して、リヴァーサイドの3作は良い意味で肩の力が抜けている。ショーターに与えられた自由度も高いように感じる。
自由と言っても、ショーターには自分に課した使命があった。それはこのバンドで、JM伝統のドライブ感とファンキー時代のキャッチー感の両方に、モードという理論をブレンドして、バンドの新しい「音」を創ることだったのだろう。

『ウゲツ』はショーターがこの使命を全うし、バンドが完全に一体となって、JMの新しい「音」を創りきったアルバムで、3管メッセンジャーズの代表作だ。

そして、『ウゲツ』はタイトルどおり、ブレイキーの日本指向が溢れ出した作品でもある。
ブレイキー親分は大変な親日家で、そのきっかけとなったのが61年の初来日。彼が帰国時に残した言葉がそれを物語っている。
「私は今まで世界を旅してきたが、日本ほど私の心に強い印象を残してくれた国はない。それは演奏を聴く態度はもちろん、何よりも嬉しいのは、アフリカを除いて、世界中で日本だけが我々を人間として歓迎してくれたことだ。」

JMは『ウゲツ』がレコーディングされる半年前の63年1月に、『ウゲツ』と全く同じメンバーで2回目の来日を果たしている。

そこで、タイトル曲の「ウゲツ」。 親分が「ウゲツとは日本語でファンタジーの意味」と、曲紹介のMCをするシダー・ウォルトンの名曲で、90回のコラムでも紹介したように、後年シダーはこの曲を「ファンタジー・イン“D”」と改題して、頻繁に演奏していたようだ。

タイトルは上田秋成の「雨月物語」に因んだものらしいが、物語の内容は怪談で、ファンタジーというイメージとは少し違うように思える。もしかすると、1953年に溝口健二が監督を務めて、映画化された「雨月物語」と関係があるのかもしれない。

シダー・ウォルトンの知性的なイントロに導かれて幕を開ける演奏は、十八番の3管アンサンブルによるテーマの後、メンバーのソロに引き継がれていく。
フレディ・ハバード、ウェイン・ショーター、カーティス・フラー、シダー・ウォルトンの順に展開されるソロは、誰もがモード理論を完全に消化しきったもので、「大人のモード」だ。JM伝統のバイタルな魅力も十分。

『ウゲツ』にはもう1曲、日本指向の作品が収録されている。ショーター作の「オン・ザ・ギンザ」。63年1月の来日時、公演の合間にメンバーはスイングジャーナルの取り計らいで、白木秀雄と一緒にいわゆる“銀ブラ”を楽しんだ。この曲はショーターがこの時の銀座の印象をもとに作ったものだ。



さて、『ウゲツ』はこれくらいにして、次は『キャラバン』と『キョウト』。




CARAVAN
Art Blakey and the Jazz Messengers
【Amazon のディスク情報】

『CARAVAN』(Riverside RLP 438)
フレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)
ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)
レジー・ワークマン(b)、アート・ブレイキー(ds)
1962年10月23〜24日 ニューヨークのプラザ・サウンド・スタジオで録音

『キャラバン』は、ベースがジミー・メリットからレジー・ワークマンに代わった最初のアルバム。
ジミー・メリットが離れたことで、『モーニン』が録音された時のメンバーは、ブレイキー親分を除いて全員が入れ替わったことになる。

チャチャイさんによれば、ジミー・メリットは12歳年下のリー・モーガンを弟のように可愛がっていたようで、リー・モーガンが退団したことで、自分の退き時も考えていたのかもしれない。

表題曲「キャラバン」はバンドのマスターピース。ブレイキー親分のドラムソロが満喫できるナンバー。

もう1曲は「ウイ・スモール・アワーズ・オブ・ザ・モーニング」。カーティス・フラーを全面的にフィーチュアしたナンバーで、このバンドが何故フラーを必要としたのかの答えがここにある。




KYOTO
Art Blakey and the Jazz Messengers
【Amazon のディスク情報】

『KYOTO』(Riverside RLP 493)
フレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)
ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)
レジー・ワークマン(b)、アート・ブレイキー(ds)
ウェリントン・ブレイキー(vo)(on Side1, track3)
1964年2月20日 ニューヨークで録音

『キョウト』はリヴァーサイド最終作で、この史上最強の6人による最後のアルバムでもある。
日本趣向はB面の2曲、「ニホンバシ」と「キョウト」。

「ニホンバシ」がスゴイ! 当時バークリー音楽院に留学していたナベサダが書いた曲で、さすがに日本らしさが醸し出されている。

ショーターのソロはコルトレーンを想起させる部分もあるが、全体として6人の個性のぶつかり合いに驚愕。何とも言えない浮遊感が感じられる演奏で、ジャズ・メッセンジャーズが残したひとつの到達点だろう。

「キョウト」はハバード作のワルツ曲。先発ソロのハバードは軽快そのもので、ショーターが創り上げたバンドサウンドは鉄板だ。聴き終わった時の充足感はハンパではない。
そして、この曲が終わると同時に、最強のジャズ・メッセンジャーズも終りを告げる。



こんなところが、ジャズ・メッセンジャーズに対する私の想い入れです。ブルーノートも文句なしですが、リヴァーサイドの3管メッセンジャーズ、是非聴いてみてください。



先頭へ
サイトポリシー●Produced by Hirata Graphics Ltd. Copyright (C) Banshodo/Hirata Graphics Ltd. All Right Reserved.