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jazz night

さんふらわあ JAZZ NIGHT プロデューサー
大橋 郁がお届けする『KIND OF JAZZ』。
媚びないジャズにこだわる放浪派へ。
主流に背を向けたジャズセレクションをどうぞ。

第55回
LIVE!
Jack McDuff



ライブ!
ジャック・マクダフ
撰者:吉田輝之



LIVE !
Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

1963年6月と10月の二つのライブを収録。問題は7曲目から始まる10月の演奏だ。最初からただならない雰囲気がただよっているのだ。不穏な空気といってもよい。マクダフはパワー全開といってよい状態。普通のベースのうねるようなグルーブではなく、何か怪しげなものが歩いて向かってくるようなベースラインなのだ。聞き込んでいくとそのただならぬムードの根源はドラムのジョー・デュークスにあることがわかってくる。

1. Rock Candy
2. It Ain't Necessarily So
3. Sanctified Samba
4. Whistle While You Work
5. A Real Goodun'
6. Undecided

7. Blues 1 & 8
8. Passing Through (Harvest)
9. Dink's Blues
10. Grease Monkey
11. Vas Dis
12. Somewhere In The Night
13. Jive Samba


【蛇足たる補足】
マクダフの名盤紹介です



Live In Greenwich Village
Hot Barbeque

Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

野獣です。




Blacknuss
Roland Kirk
【Amazon のディスク情報】

野獣VS怪人です。




Brother Jack Meets the Boss
Jack McDuff and Gene Ammons
【Amazon のディスク情報】

サンダ対ガイラです。




Prestige Years
Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

よく見ると意外に可愛い顔をしています。




Brother Jack/Tough 'duff
Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

いなせなところもあります。




Good Night, It's Time To Go
Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

けどやはり怖いです。。




SOPHISTICATED FUNK
Jack McDuff
【Amazon のディスク情報】

もはやエロジャケという概念をはるかに超えています。



Sunflower Jazz Night
フェリーで揺れる、ジャズの夜。
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Volontaire
東京赤坂でジャズなら
カフェ&バー、ボロンテール

Doodlin
ソウルでファンキーな夜を。
神戸元町のジャズバー、Doodlin'

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こんにちは、吉田輝之です。みなさん、ゴールデンウィークはどのようにお過ごしでしたか。私はいつもの通りポォーとしていました。しかし、休みの最後の日である5月6日の夜外に出て、「今日は満月か」と空を見上げると「お月さん、デッかー」と驚きました。ご存じの通り、月は地球に近づいたり遠ざかったりしていますが、当然、近づく程、地球からは大きく見え、この夜のように最も近づいた時に満月だった場合、スーパームーンというそうです。この前後は不思議な事が起こるといわれていますが、皆様何か起こりませんでしたか。私にはありました。

さて今回は「Jack McDuff/LIVE!」です。



僕がジャズを聴きだした70年代、オルガンジャズといえばジミー・スミスだった。バイオリンやハーモニカやバグパイプと同じくらいジャズの楽器としては珍しい楽器と思い込み、他にオルガンジャズプレイヤーがいるなんて思いもよらなかった。
しかし、80年代後半から起こったアシッドジャズのムーブメントでオルガンを中心としたソウルジャズが見直されて、こんなにオルガンプレイヤーがいるのかと驚いてしまった。また、ジミー・スミス達オルガンジャズがブルーノートやプレステッジのドル箱で経営を支えたことを知ったのも随分後になってからだ。

ソウルジャズ界というのはオルガンプレイヤーだけでなく、ホーン、リズム隊も知らない人ばかりで、ジャズ界に未知の巨大組織が存在していることがわかり驚愕してしまった。そして、その中で裏番と言おうかラスボスといおうか、とにかく大ボスがジャック・マクダフだ。

この人、親分だけあって多くのミュージシャンが育っており、特に歴代のギタリストはグラント・グリーン、ジョージ・ベンソン、パット・マルティーノ、フィル・アプチャーチとすごいメンバーだ。

今回取り上げたLIVEは1963年6月(ニュージャージー、FRONT ROOM)と10月(サンフランシスコ、JAZZ WORKSHOP)での二つのライブが収められており、もともとアナログでは別々のレコードだったが、CDで一枚にされた。メンバーはギターがジョージ・ベンソン、ドラムがジョー・デュークス、テナーが6月のLIVEではレッド・ハラウエイが10月ではハロルド・ヴィックが演奏をしている。

この二つの演奏、時期が近くメンバーもテナー以外は同じなのに受ける印象がかなり違う。最初の演奏は一言で言えば「リラックスした演奏」だ。リラックスした演奏というのは「だれた演奏」の言い換えで使われることもあるが、ここでの演奏はだれているわけではない。おそらく、このクラブの客の大半は黒人で最初は力まず演奏していくのが普通なのだろう。1曲目のROCK CANDYはマクダフのオハコといえる曲で馴れた演奏だ。ちなみにROCK CANDYで何かわかりますか。氷砂糖のことですが、角砂糖のようにキュービックではなく棒状のミント味のアマーいキャンディのことを言うそうです。棒状で甘いって、何を意味しているかわかりますよね。
しかしこのライブ、最初は淡々としているが、さすが後半になると盛り上がってくる。

問題は7曲目から始まる10月の演奏だ。何か最初からただならない雰囲気がただよっているのだ。不穏な空気といってもよい。マクダフはパワー全開といってよい状態で、マクダフの特長であるフットペダルを使ったベースラインの凄いこと。普通のベースのうねるようなグルーブではなく、何か怪しげなものが歩いて向かってくるようなベースラインなのだ。
ベンソンもハロルド・ヴィックも燃えている。

しかし、聞き込んでいくとそのただならぬムードの根源はドラムのジョー・デュークスにあることがわかってくる。
ジョー・デュークス、彼は「梅にウグイス、松に鶴、牡丹に唐獅子、朝吉親分に清次、ジャック・マクダフにジョー・デュークス」と言われる程の、マクダフの片腕、名コンビであり、あまりに過小評価されている豪腕ドラマーだ。

このジョー・デュークスが怒っている。少なくとも僕はそう感じてしまう。最後のJIVE SAMBAでは一人ドラムを叩きながら、叫んでいる。マクダフのバンドはヒーティングシステムといわれたが、ジョー・デュークスの怒りがバンドを焚きつけている。しかし彼が何に対して怒っているかはわからない。

この二つのライブの間、1963年6月と10月の間に何かあったのか。無論あった。それもアメリカ黒人史、いや世界の歴史に残る大事件が。8月28日、キング牧師によるワシントン大行進があったのだ。この時期、アメリカの全ての黒人が異様な熱気に包まれていたのは間違いない。
しかし、もう一度繰り返すが、本当のところ彼もしくは彼らがこの時、直接的には何故怒っているのかはわからないのだ。店の出演料が安いと怒っているのかもしれないし、その日の朝、奥さんと子供の教育方針でケンカをして怒っているのかもしれない。はっきりしているのはジョー・デュークスが怒り叫び声をあげながらドラムを叩いているということである。

ジョー・デュークスのJIVE SAMBAでの叫びを聞いたときから、僕も怒った時に同じことを叫ぶようなった、みな彼とともに叫ぼう。「MY SOUL!我が魂よ」と。



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