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Real Picasso
 ピカソを考えるキーワード




万象堂では、連載『書物迷宮・第12回』においてピカソの『Picasso The Italian Journey 1917-1924』を取り上げた。この書物は、ピカソの豊かな表現史の中で、最も写実性がロマンティックに昇華された時代の作品ばかりを集めた傑作だ。ピカソは目と鼻と口がバラバラにくっついている絵の印象ばかりが先行しているフシがあるが、そのような作品は『Picasso The Italian Journey 1917-1924』で取り上げられている時代にはほとんどない。

ピカソは作風を変貌させながら成長していった画家として知られ、それは特に、身近な女性の存在が大きく影響していたといわれている。この『新古典主義』とも呼ばれる時代は、妻であったオルガが、まだキュビズムの方法論を追求していたピカソが描いた自身のポートレイトに対して『これは私ではない、私に見えるように描いてほしい』というようなことを言われて始まった、と伝えられている。そうして始まったのが、“古典”をピカソなりに新しく解釈した『新古典主義』と言われる時代である。

とはいえ、“古典”とは何なのか、“新古典”とは“キュビズム”とは一体何か、ということも問題だ。そういう風に考えると、そもそも作風を時制から捉える『○○時代』という考え方がそもそも絵画という表現には不毛な捉え方なのである。描く側からすると、『○○的』などと考えて作品に向かうことは、まずない。あくまでも五感と思考があるのみで、そうして出来上がったのが絵画作品だからだ。批評する側や鑑賞者からはそういった『○○時代』というくくりはベンリだろうが、実は絵画や表現の本質からはほとんど関係ない。

作風の変遷というのも、とりたてて騒ぐことではなく、むしろ当たり前なのである。ピカソのように80年も絵を描いていれば、作風が変わって当然なのだ。ピカソがまだ10歳にも満たない頃に描いた手の緻密なデッサンから、晩年のシンプルなドローイングまで、実はピカソは変わっていない。確かに、使う画材やモチーフは変わっただろう。テクニックも変遷があっただろうし、結果目に出来る作風も変わっていっただろう。しかし、ピカソが何を描こうとしたか、ということは全く変わってはいない。それは、今回の美術展やピカソ美術館に行けばよりよく理解できるだろうが、80年に及ぶ作品をダイジェストに掲載したアンソロジー的な画集を見ても、たちどころに了解できるだろう。

ピカソが描こうとした変わらないもの。それを考えるキーワードが『写実』なのである。


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