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澁澤華乙画集
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第1回…霊媒師みたいなもの
第2回…秘すれば花
第3回…2つの方向
第4回…読者の感性
第5回…朝日カルチャーセンター
第6回…赤はどうしたって赤

第7回…西洋絵画について
第8回…足るを知る
第9回…画集は共有のもの

澁澤華乙・インタビュー

第1回
…霊媒師みたいなもの

どうやって今の画風に至ったのか。そしてそこにはどんな思いが…。


澁澤
私は、ことさら思想性を持って絵を描いているという、そういう者ではないのです。
霊媒師のようなものです。
人様にお話しするようなものは何もないのです(笑)。

平田
いえいえ(笑)。
一番興味深いなあと思うのは、画風が大きく変わりましたよね。

澁澤
女性美から?

平田
ええ、そうですね。
そのきっかけになったのが野菜であるというふうにおっしゃってたんですけども。

澁澤
長く女性美を追究して来て、ある時一枚の絵を望んだように描くことができたのです。その時に女性美が私の中で終わったとわかったのです。

平田
おお…。

澁澤
そして、別に次になにを描こうとか考えたわけでもなく無為に過ごしていたときに、母が、おもしろい人で、キッチンの中にぽこっと洗い物の途中でジャガイモとか、里芋とか、その置き方になんか風情があるというかおもしろい人で(笑)。
なんかもぞもぞとしてくるものがありましてね。

平田
絵心が刺激されるみたいな。

澁澤
そうなのです。
何かもぞもぞっと来るものがありましてね。
スーパーで、カボチャか何かを見た時に、描きたいと思ったのです。

平田
突然?

澁澤
ええ。
ちょっとこれ描いてみようと思いましてね。
それでカボチャを描いたのです。

平田
それがあれですか?

澁澤
ええ。
それが野菜を描いた最初なのです。

平田
いまゾクゾクって来ましたよ。

澁澤
(笑)

平田
じゃあ、突然あの絵になったんですか?

澁澤
ええ。

平田
それまではJALの(女性の)ああいうのだったのが…

澁澤
そうなんですよ(笑)

平田
それが突然あのタッチに…

澁澤
そうそう(笑)

平田
なんでですかね。

澁澤
知らない(笑)
だから、思想性とかないのですよ(笑)。

平田
前、青山杉雨のお話をされてましたよね?
そのへんも、その時期なんですか?

澁澤
青山杉雨を見たのは、もっと後です。

平田
後?

澁澤
ええ。
それは成田山の美術館で見たのです。
それは紛れもなくお不動様が見せてくださったのです。

平田
じゃあ、あの、なんていうんでしょう、抽象性だとか僕が感じたような書の雰囲気だとかいうのは、突然なものなんですか?

澁澤
ええ、そうです。

平田
へえ!

澁澤
(笑)。
思想性とか考えてないんですよ。

平田
絶句しました…。

澁澤
要するに私にとって言葉は一番最後か、あるいは不要ですね。

平田
ということは、かぼちゃが絵を描かせたっていう言い方が出来るんですか?

澁澤
ええ、師在自然で。かっこよくいえば。

平田
かっこよくいえば…。
じゃあ、ご自身でもびっくりされたんじゃないんですか?
あの絵が生まれた瞬間というか。

澁澤
そんなことはないですよね。自分で描いてるわけだから。

平田
ああ…。じゃあ、わかってて描いてる…。

澁澤
おっしゃることはわかるんですが、そのあたりのことは私には説明できないですね。

平田
はあ…。じゃあ、生まれたとしかいいようがない…。
カボチャの絵が生まれたとき、完成しますね、どこかで筆を置きますよね、これだろうということで。その時の感覚というか、眺めたときになんかこう、変わったなとか、これは自分の中でいままでと違う絵なんだという感覚もあんまりなかったんですか?

澁澤
ないですねぇ…。

平田
ごく自然な感じで。

澁澤
要するに、誰かのまねをするとか、誰かの影響を……、受けてるんだけれども……

平田
なにがしかは受けてる…

澁澤
ええ、当然のことながら。ただ、意図して生まれたものではないですね。

平田
ほぉ…。

澁澤
かぼちゃに何かもぞもぞと感じるものがあって、そのもぞもぞを描こうとして……

平田
かぼちゃ、載せりゃあよかったですね。最後まで候補に残しといたのに。(笑)
その次に野菜が何枚か連続して生まれた。

澁澤
ええ、そうです。
その後が、椎茸ですね。中国産ですが。それがかわいらしくって。それをたくさん買ってきて。
だまって見てた時に、わぁ〜っと出てくるんですね、描くべきものが。あのころは若かったから鮮明でした。
それが今は歳をとったのか、なかなか出てこなくて。地を這いずり回ることが多くなりました。
あの頃は、見ているうちにばっと出て描いて。2枚目くらいに必ず成功しましたね。だから、3枚描けば完成しました。

平田
それは拝見しましたね。

澁澤
その次が人参。

平田
う〜ん。例の伝説の人参ですね。

澁澤
(笑)
あの人参はまさに朝陽の中でよみがえった美しい姿で、もう、うれしくて。見てたらさっと出て来ましたね。

平田
その、カボチャから始まった一連の野菜っていうのは、オーダーがあって描いた絵ではないですよね。
描くべきものが見えたという。

澁澤
ええ。
だから霊媒師なんですよ。それが一番ぴったり来ます。

平田
よく音楽のたとえ話をするんですけど、そういう話をよく聞きますね。自分が作曲したんじゃないっていうんですよ。すごく優れた作曲家は。やって来たんだって言うんですよね。やって来て自分はそれを弾いただけだ、みたいな。自分が作曲したということになってるんだろうけども、そういうのはちょっとおこがましいような気がするみたいなことをおっしゃる人もいるんですね。それにかなり近いものが、なんか。

澁澤
そうですね。

平田
見てる人はほんとうにいろんな見方をするなあって、おもしろいと思ってるかもしれないですね、澁澤さんは。ある人はこういう風に言うし、またある人はこういう風に言うし。自分はそんなこと考えてないのに、みたいな。

澁澤
おもしろいというよりも、感性の豊かさに感動します。すばらしいと思う。なんか、申し訳なくなりますね。

平田
(笑)申し訳ないですか?

澁澤
(笑)単に霊媒師だから。


※続きます

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