
インタビューと全曲解説は
鳥海森介さんの寄稿により、
万象堂が編集しました。
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生涯の音楽。
こうやって書物という形になったが、足かけ5年くらいかかった。はじめは自分のためにだけ訳してたので、本にするということはまったく考えてなかった。でも、万象堂さんという奇特な(失礼!)出版社が出してくれることになった。有り難いことだし、これでロバート・ジョンソンを日本語で味わう別の世界が出来るので、ブルースの広がり、という意味では役に立てるのかもしれない。
あと、輸入盤を買われた方にはいいかもしれない。輸入盤には日本語訳は載ってないから。まあそれも、ボックスセットを欲しい、という熱心な方くらいなんだろうけど。
さて、この歌詞集は、大きく分けて4つのパートに組んでいる。
これは私がより分けたもので、この歌詞集だけの分類だと思う。他では見たことないから。
ロバートの歌は、私が思うに、次の4つのテーマで表現されている。
ひとつは、『恋愛』。そして『セックス』。次に『仕事』。そして『運命』。
それぞれみな、頭に“自分の”が付く。“自分の運命”。一般的な切り口はひとつもない。よくある『男ってこうだよね』とか『人間ってさあ』とか、そういう一般論的なテーマとか、『頑張ろうよみんな』とかの人生応援歌みたいな歌はひとつもなく、すべてに関して『自分のこと』を歌っている。それが特徴だろう、ブルースの。
そういうわけで、この分類に分けて編集した。掲載順も、この順になっている。各分類の中のそれぞれの曲順は、流れで考えているので、あまり深い意味はない。それでも、最後は『Me
And The Devil Blues』で締めくくりたかったが。
最後に掲載した年譜は、かなりの分量になったが、これでも相当カットした。紙数の都合、というわけである。
初期の原稿では、1607年にイギリスが北米に最初の植民地、ジェームズタウンを建設して、1619年にアフリカ大陸からアメリカ大陸に奴隷船が到着した、なんていう出来事からはじまってた。そこが、アメリカ合衆国での、黒人の起源だから。それがないと、ブルースは誕生していない。
そして、ロバートの歌詞に感じられる文学性も相対化させたくて、ポーやトゥエイン、フィッツジェラルドなどの活動ともオーバーラップさせられるように年譜を組もうとした。実際、ロバートが15歳の年にはヘミングウェイが『陽はまた昇る』を刊行している。しかし、ロバートがそれを読んだかどうかは分からないが。
ロバートの歌唱に感じられる表現力には、映画的なものがある。それだから、同時代的に映画の歴史も重ねようとも考えた。それはそれで魅力的なエピソードなんだが、割愛した。想像の域を超えないし、ロバートの表現したブルースは、文学や映画の直接的な影響というよりは、同時代として大きい意味での文化的影響という風に捉えた方がいいだろうと思ったからである。
生前の年譜に関しては、『Complete Recordings』や『十字路の彼方へ 〜ブルースギタリスト列伝〜』、『ロバート・ジョンスン 〜伝説的ブルーズマンの生涯〜』など、いろいろな文献に掲載されているものを整理したというものである。
死後は、あちこちの資料から引っ張ってきて編集。どうしても、死後にも言及したかった。影響力、という見方でロバートの音楽を語るということではない。継承され、生き続けているということを知ってもらいたかったからである。この2004年にも、エリック・クラプトンが全曲ロバートのカバーでアルバムを出した。それくらい、時間を超えて生き続けている音楽なのである。それはロバートの音楽に限ったことではないが、しかし、ロバートの音楽がそれほどの強靱さを備えているかということは、年譜を通して伝わるんじゃないかと思っている。
いろいろまだ話は尽きないが、きりがないのでこの辺で。
ロバートの音楽に出会えたことを、私は幸運に思っている。
生涯の音楽のうちの、ひとつ、ということで。
(文=鳥海森介)
(c) 2004 Shinsuke Toriumi
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