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Editor's Note
書海放浪記
2009.06.14

それぞれの、ボブ・ディラン



最近ボブ・ディランをよく聴いている。それはきっとニューアルバム『Together Through Life』が出たからということもあるが、なにより今の私はディランなのだ。よくわからないが、そういう“波”のようなものが昔からずっとあって、ブルースばかり聴いているときもあれば、ストーンズばかりの時もあり、場合によってはクラシックばかりの時も、あるいはヒップホップの時もある。理由はわからない。ちょっとしたきっかけが人に何かをさせるのと同じく、ふとしたことで音楽の流れが変わる。

最新アルバムの“宣伝帯”に書かれている本人のコメントは、なかなか考えさせられる。
“最近のリスナーはようやく歌そのものを聴いてくれるようになった。歌を拡大解釈せず、歌そのものを聴いてくれることで、自分はようやく自由になった”というようなことを書いているのだ。

常に意味を考えながら歌を作ってきたディラン本人は、リスナーには、意味を深く考えすぎず歌詞もメロディもビートも一緒にして、ただ歌としてとらえ、聴いてほしいと考えていたのである。
彼は自伝でも書いているとおり、コメントのどこまでが真実でどこからが冗談がわからないところがあるので、いちいち真に受けていたのではディランの思うツボ、適当に読み流してもいいかもしれないが、今回のコメントは本心ではないかと思った。

タイトルの『Together Through Life』、人生を共に、というような簡単な言葉だが、込められているメッセージはいろいろあると思う。などと書くとディランには『拡大解釈するな』と怒られそうだが。

帯にはこんなことも書かれている。“リスナーによって、自分のいろいろな時代のサウンドを好きなそれぞれの人たちがいる”。
このコメントは意外だった。たいていのミュージシャンは、自分が歩んできた全ての時代を自分自身と同一化してとらえる傾向があるからだ。それがとりわけ顕著なのはマイルス・デイヴィスだったが。過去をバラバラに切り離して自分の創作活動をリスナーという視点で客観的にコメントするということは、かなり珍しい。

そういう意味からも『Together Through Life』というタイトルは、過去の全てを肯定しながら、未来も肯定しているという恐ろしくポジティブな姿勢を感じるのである。
(バックナンバーページに続く)


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